来 歴


ある日私は


ある日私は追われる距離を追いぬいて
天の高みへ近づこうとする必死の翼だ

自分の円周を自分のこぼした血の色で
思うさま染めあげて行く不適な太陽だ

水のたりない遠くの村のぶどう畑まで
悪い夢と秋を刈りとりに行く遠い足だ

涸れた野井戸の底にへばりついている
昔のかさぶたを見つけ出す確かな目だ

細くて痛い咽喉の奥まで下りて来ては
悲鳴をふさいでしまう重たい頭蓋骨だ

どっと溢れ出る心の激流に溺れきって
ついに透きとおってしまう言葉の群だ

徒労な計算をくりかえしたそのあげく
優しい人生の法則からはみ出した答えだ

その疲れはてた頭のうしろ側に隠れて
ひそかにほくそえんでみせる別の私だ

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